病
昨日、母が入院した。
正確にいえば、入院させた。
このところ私は、朝からおにぎりをつくって母を見舞い、相手をして、
仕事をして、医者へ連れて行き、を繰り返していた。
月曜から水曜まで同じようなパターンを繰り返した。
抗鬱剤を飲んだ母はその晩、また眠れなかった。
寝付いて2時間後に目が覚め、その後朝まで一睡もできず、
手足の震えに怯えていたという。
水曜日はだから一日体調が悪かったのに、
午後かかりつけの医者へ行くと言い張る。前日の精神科の報告をするという。
手足の震えについても話したいという。
でも医者は専門外のため、どうすることもできない。
一週間受診を待たずに翌日もう一度精神科を受診して、
薬を替えてもらえばと言う。私はもう、ゲッソリする。
その日の夕方、ケアマネさんに電話して、介護認定変更のことについて
訊ねるついでに、今の様子を報告した。
すると入院させたほうがいいという。
母はその日、特別に様子がおかしかった。
一緒に寝るよという娘たちの申し出を断るので、夜に見に行くと、
母の身体は硬直して、足が前へ出ない。とんでもない形相をしている。
虚ろな目は瞬きもせず、どう見ても正常ではない。
トイレにも行けない。ベッドの上でも動けない。
上の姉とふたりがかりでどうにかトイレを済ませ、ベッドで身体を移動させた。
夜中にそっと見に行くと、母は寝息をたてていた。
これはもう、精神科で薬の調整などといっているレベルの話では
ないのではないか。とにかくこの低血圧をなんとかしなくては、
そしてもしかして何か重篤な病気が隠れているのかどうか、
もう一度調べたほうがいいのではないか、そんな結論に達した。
内科や精神科、一通り揃っている病院へ行くべきだと、姉と相談した。
そして昨日、姉が調べて評判もきいたことがあるという、
比較的近い総合病院へ、私がタクシーを呼んで連れて行った。
母をなんとか説得した。
タクシーを降りて、病院の入り口ですぐに車椅子を借りた。
紹介状もないけれど、とりあえず内科を勧められ、順番を待った。
トイレに行きたいと母は何度も言う。
待っている間に2回車椅子を押して行ったけれど、「出ないわ」と言う。
「こんなに狭いトイレじゃ、息苦しくて出るものも出ない」と文句を言う。
担当医にひととおり病状を話して、本当に今困っていると訴える。
アブナイ事を告げる。私は入院してほしかったからだ。
「検査入院ならできますよ」ということになった。
母は厭そうな顔をする。「今日なら個室がたまたま空いてます」と言われ、
上手く母を説得し、すぐに入院させてもらうことにした。
担当医は「パーキンソン病の顔をしてますね」と軽く言う。
パーキンソン病だと、低血圧も鬱症状も出るという。
身体の強張り、足のすくみ、独特の仮面様顔貌…。
今までも実は何度か、パーキンソン?という説は、家族の中であった。
けれど癌研でも女子医大でも、あらゆる検査を定期的にしてきたし、
脳のMRIだってCTだって全部やってきて、常に異常なしだったのだ。
パーキンソンは血液検査ではわからないという。
病室のベッドの上の母は、身体が動かず、方向転換もできなかった。
私がどう支えても動かないので、仕方なく頭を逆にしたまま寝かせた。
検査を少しして、部屋へうつり、遅い昼食をとり、問診がおわって
私が病院を出たのは3時すぎ。
それから入院のしたくをして、荷物を詰め、上の姉と一緒に
もう一度病院へ向かった。
すると母の血圧は今度は異様に高く(興奮したのかも)、
すっかり上機嫌である。いくらか動くこともできる。
昼間までの母が嘘のように、いくらか笑顔も見せる。まるで別人だ。
帰宅したのは夜の8時近かった。帰りのバスの中で、強烈な眠気が襲ってくる。
どうしようもなく疲れていることに気づく。
夜中に姉と、お互いネット上で検索しながら電話で話し合う。
調べてみると、パーキンソンではなく、パーキンソンによく似ているが
別のひとつの病気に、症状がぴったりだということがわかる。
薬が効かないとある。進行が早いとある。
癌みたいに、早期発見して病巣をすべて摘出すれば大丈夫というものとは違う。
早くから分かっていたとしても、変わらなかったかもしれない。
それでも家族の気持ちのもちようが違っただろう。
母をみる目が違ったかもしれない。
もちろんその病気だと判明したわけではなくって、まだ事実はわからない。
明日、脳のMRIを撮るのだという。神経内科が専門になる。
母がもしその病気だとしたら、すでに発症から数年以上経過している。
病気のレベルでいえば、既に最終レベルの下から二番目のステージに
到達しているのかもしれない。
さあて、これからどうなるか…。
母は検査入院だから、あと3~4日で退院すると思っている。
実際はどうなるかわからない。
長く厳しい介護の道が続くのか、他の方法があるのか、
何をどうするのがいいのか、どうできるのか…。
今はまだわからない。
だけど結局は、なるようにしかならなくて、まあ、どうにかなるよ。
先のことを思い悩んでも仕方ないね。
一年後の自分がどこにいて何をしているかなんて、案外わからないものだよ。










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