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秋、進む

091019_161851

これは、巻雲って呼ぶのかな。
空の高いところに漂っている雲。
田無駅、アスタ専門店街に続くデッキの上で。

秋は空が高いのだ。


先週の金曜日、
母の病院へ行くつもりで身支度をしていたら、
姉から電話があった。

母が前日の晩に熱を出し、
インフルエンザの可能性も否定できないため
病室を移動して、様子を見ているとのこと。

翌朝確認の電話を入れると、
母の熱はすでに下がっていて、新型インフルエンザも陰性だったという。
それでも万が一を考慮して、母は熱のある人を集めた病室に
カーテンを引いて隔離されていたらしい。
週明けまで家族の面会も控えてほしいとのことだった。

やはり病院側も時期が時期だけに、
対応が過敏になっているのは仕方のないことだし、有難いことでもある。


先週は姉の都合やらで、結局5日間、娘の誰とも面会できなかった母は、
今日私が病室を訪れると、眉を八の字にして喜ぶ。
「やっぱり、家族が来てくれると嬉しいね」と言う。

丸一週間お風呂に入っていない母は、
あっという間に薄汚れた感じになってしまっていた。
娘たちが持参する、高カロリーの美味しいおやつを食べることも
なかったせいか、いくらか頬がこけたように見える。

顔を何度も拭いたり、耳を掃除したり、手足の爪を切ったり、
顔の毛を剃ったり、足をもんだり首をもんだり、
今日はやることがたくさんあった。

「今度はいつ来るの?」と母が訊くので、
「たぶん、金曜日に来ると思うけど」と答えると、
「金曜日って何曜日?」と言う。

「金曜は金曜よぉ~」と私が言うと、
「違うよわ。何日なのよ?」と母は言う。

「この頃、何曜日が何日か、わかんなくなっちゃった…」
母は大切なものを失くしてしまったように呟く。

「そんなもん、私だって、いつだってわかんないわよ」
それは事実だ。

だけど私たちは、カレンダーや手帳を見て、
いつだって容易に確認することができるし、
時間も曜日もすべてのことが、自分の掌に握られていると、
自分の思いのままに操ることができると、
そんなふうに思っているだけだ。

行きたいところへ歩いて行ったり、
欲しいものを手にしたりすることができないどころか、
枕の位置が気に入らなくてもどうしようもないとか、
布団がズレて足元が冷えても直せないとか、
背中のあたりで下着とパジャマの裾がまるまって
モソモソするのを我慢するしかないとか、そんなふうに
自発的に何かをする身体の自由がほとんど奪われた状態で、
見当識が少しずつ狂いはじめ、
今日が何曜日の何日なのか、
あの人が来たのが昨日だったのか一昨日だったのか、
そういうことが少しずつ「わからなくなってしまった」と感じることの
本当の意味や不安や怖れを実感するのは、
間違いなく本人しかできないことだろうと思う。


母と話をしている最中に、ふいに母が右手をかざす。
「なに?」と訊くと、「爪」と言う。

ああ、爪を切ってほしいのね。
しばらく独りだったから、何かと要求が多いのね。淋しかったのね。

そしてまた母と何かの話題で話していると、
ふいに、「今、何してるか? おしっこ」
と、自分で訊いて、自分で即答している。
私と話していることの内容よりも、自分が今、オムツの中に
放っているおしっこのことに、気持ちが集中していたのだろう。
考えてみれば、ごく自然なことかもしれない。

「くっだらないわねぇ~」と、軽く笑い飛ばしておいた。

少しずつ少しずつ、でも確実に、母の認知症は進行しているんだなと思う。

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コメント

ウチの母も先週は少し危なかったんです(>_<)
微熱が続き食欲もなく点滴していました。
レビーの人は進行が早いと聞いていましたが
お年寄りは一般的にもがたっと悪くなる様です。
もう歩行も無理になりました。
幻視が増えて認知症も進んだ気がします(‥、)
でも1日行かないと捨てられたかと思った、、
なんて事も言います。それにしても
私は前の母より今の母のほうが
かわいいなあ、と思えるのです。
変な感覚ですね。
お母様お大事になさって下さいね。

投稿: 時の彼方 | 2009年10月20日 (火) 09時43分

時の彼方さん

そうですよね、ある時ぐぐっと進行するんですよねぇ。

でもでも、一筋縄にいかないのが
レビーの不思議、ってやつで…。

「捨てられたかと…」って言われても構いませんね。
あんまり無理したら、
時の彼方さんが潰れてしまいます。

それでも、今のほうが可愛いって思えたら、
ちょっとは気が楽かしら。
うちの母の場合、長所で隠されていた短所の部分が
やたらに際立ってきた、っていう感じです(笑)

お母様はもちろんですが、
誰よりも時の彼方さんご自身を、
大切になさってくださいね。

投稿: くりこ | 2009年10月20日 (火) 20時05分

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