それぞれの荷物
娘は今、不安定の極みである。
就職就職就職。どの美容室?どこで働く?何を目的に?
そうしたらどこへ住む?
髪の色は何色に?服がない。お金がない。バイトが決まらない。
やっぱり黒髪だ。いいえ、普通の子みたいに茶髪にしよう。
黒染めしてるから染まらない。ブリーチか?どうなんだ?
カットが上手くできない。ブローも難しい。
だって左手でロールブラシを操るんだよ?ドライヤーは重いんだよ?
etc.etc…
ヤレヤレ。
ホルモンの波に揉まれちゃってるからよけいに今、タチが悪い。
娘と結婚する男は大変だなと思う。
よほど懐の深い、度量の大きい男でないと…。
息子は息子で気が重い。
彼は最近、軽く孤独。
適当に話す友達はいるようだけど、深くつきあう友人の存在を失った。
自分の趣味を分かち合うことができないと嘆く。
そんな友は待っていてもできないと私は思う。
それでもボクは、待つんだと言う。
来週の火曜日から中間試験。
中学生と違って、赤点だったら単位が危ない。
本気でやらなきゃダメなのよ。勉強は難しいのよ。
だけど数学はわからない。でも投げるわけにもいかない。
「勉強ってつまらないね、お母さん」
「ああ!つまんねぇなっ!」と太い声で吐き捨てるように息子が言うと、
私はちょっと怖くなる。
「それは私に訊いてほしいの?それとも言いたくないの?」
と私が訊ねると、「言いたかねぇよ!」と息子は答える。
不安定だと、息子は必ず私に片手を差し出す。
『淋しいボクを抱きしめてくれ』と、その手は語りかけている。
高校生の息子をハグする気にもならないので(だって私は日本人)、
私は息子と握手をする。強く、握手をする。
そして私と握手をして、気が済むと、すぐに息子は手を洗う。
憎らしいな。洗うくらいなら握手なんか求めるなよ。
昔みたいに、子供の問題の渦の中に身を置くことは、さすがにない。
子供は子供。私には知らないこともわからないことも、
もちろん沢山抱えているんだろう。
私が子供に自分のバッグの中身を見せないように、
私も子供が背負ってるリュックの中身をほじくり返したりしない。
リュックが破れないかしらと、心配で窺っている自分もまだいるし、
荷物が入りきらないと喚かれることもまだまだあるけれど、
なんとか適当に、やりくりしていってほしいと願う。
それが、大人になるってことかしら。
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